はじめに|どうして通信制高校が気になったのか

「学校に行きたくない」
「もう今の高校を辞めたい」
これは、わが子が実際に発した言葉です。
高校生活が始まった頃は元気に通っていました。
「大学に進学したいから」と勉強にも前向きで、高1の1学期から大学受験を見据えて塾に通い始めました。
でも、2学期が始まってまもなく、「頭が痛い」「お腹が痛い」と体調不良を訴え、次第に学校に足が向かなくなりました。毎朝がつらく、無理に行かせることもできず、私たち親もただただ戸惑いました。
休む日が続くと、親である私でさえ学校への連絡が億劫になり、電話の着信にドキッとするようになっていきました。
「このままだと単位が取れなくなりますよ」「進学にも影響が出ます」「テストだけでも受けに来てください」
そうした担任の先生からの言葉はもっともなことですが、子どもにとってはプレッシャーでしかなく、さらに先生とのやり取りを避けるようになりました。
とても繊細な性格のわが子にとって、クラスの雰囲気や“みんなに合わせてふるまう”日常は、心がすり減っていくような感覚だったのかもしれません。
体育のクラスは1個も落とせない、という時は何度か頑張って行ったこともありましたが、やはり辛かったようです。
「そんなにつらいなら、もう行かなくていいよ」「辞めてもいいよ」
この言葉を口に出すのは、親として本当に勇気が要りました。
後になって聞いた話ですが、朝、普通に家を出て、学校に行かず公園やショッピングモールで時間をつぶしたこともあったようです。それを聞いた時、気づいてあげられなくてごめんねという気持ちでいっぱいでした。
そんな中、私たちが転校を考え始めて、全日制への転校と同時進行で、真剣に調べることになったのが「通信制高校」という選択肢でした。
かつては「不登校の子が行くところ」「勉強ができない人の道」といった偏見を持たれがちだった通信制高校ですが、今はまったく違います。
自分のペースで学びたい人、夢や目標と学業を両立させたい人、心の安定を最優先にしたい人——。通信制高校は、さまざまな背景を持つ子どもたちに柔軟に寄り添う場になっていたのです。
この記事では、そんな通信制高校について、基本的な仕組みや全日制との違い、どんな生徒が通っているのかといった情報を、我が家の体験を交えながらお伝えしたいと思います。
通信制高校とは?|全日制・定時制との違い

「通信制高校」とは、学校に毎日通わなくても、自宅学習を中心に高校卒業を目指せる仕組みの学校です。
同じ「高校」でも、通学のスタイルや学び方が異なります。
📘 高校の種類と特徴
種類 | 通学日数 | 授業時間帯 | 学習スタイル |
---|---|---|---|
全日制 | 週5日(毎日) | 昼間 | 一般的な高校。毎日授業があり、行事や部活動も多い |
定時制 | 週5日(夕方や夜) | 夕方~夜 | 働きながら通う人向け。時間の柔軟性がある |
通信制 | 月1~週5日など | 自宅中心+登校日 | レポート提出やスクーリング(登校)で単位を取得 |
通信制高校の最大の魅力|「自分のペース」で生きられる

通信制高校の最大の特徴は、「自分のペースで学べること」です。
通学の負担が少ないことで、体調や心の安定を優先できるのはもちろん、時間を自由に使えるため、やりたいことと両立しやすいというメリットもあります。
芸術やスポーツに打ち込んだり、アルバイトやボランティア、資格取得、大学受験の勉強に集中したり…。そのスタイルは本当に人それぞれです。
わが子の話では、通信制高校の友達に「親の協力のもと、すでに起業している子」がいるそうです。
すごいですよね!
他にも、ゲームを極める子、投資やプログラミングを学んでいる子、留学を目指している子など、“今”や“未来”を自分で選び取っている生徒たちがたくさんいることに驚きました。
親として感じた「自由」と「安心」

親としても、通信制高校に通うようになってから、本当に気持ちが楽になりました。
正直、以前は「起きられない子どもを毎朝何度も起こす」ことがとてもつらかったんです。
「行かせなくちゃ」というプレッシャーと、「行けない」現実の狭間で、私自身も疲れていました。
でも今は、子どもが自分で生活リズムを整え、自分の意思で動いている。
朝はゆっくりでも、アルバイトの日はきちんと起きて準備し、元気に出かけていきます。
その姿を見て、「ああ、この子にはこのペースが合っていたんだな」と心から思います。
アルバイト先では、みんなに優しくしてもらっているようで、今の居場所がとても居心地よく感じられているようです。
笑顔で「バイト楽しい!」と言う子どもを見るたびに、無理をさせるよりも、その子に合った環境を選んでよかったと実感しています。
通信制高校の仕組み|学び方・卒業要件など

通信制高校の学び方は、全日制とは大きく異なります。
毎日学校に通って授業を受けるのではなく、
「自宅学習+スクーリング(登校)」というスタイルで学習を進めていきます。
わが家も初めて知ったときは「えっ、学校に行かなくても卒業できるの?」と驚きましたが、きちんとルールがあり、必要な条件を満たせば全日制と同じ「高卒資格」を得ることができます。
学びの3本柱|通信制高校の基本
通信制高校の学びは、主に次の3つで成り立っています:
学習の柱 | 内容 |
---|---|
① レポート | 教科ごとに決められた課題(プリント・ネット)を提出 |
② スクーリング | 学校に登校して授業を受ける(頻度は学校により異なる) |
③ テスト | 学期末や単位修得のための試験を受ける |
📘 レポート:基本は自宅学習
学校から配布される(またはオンラインで配信される)課題を、自宅で学習して提出します。
分からないところは、スクーリングで先生に聞いたり、メールやチャットで相談できる学校もあります。わが子はバイトの先輩やAIに助けてもらっているようです。
慣れるまでは「何からやればいいの?」と戸惑っていましたが、レポートの進め方がわかると、少しずつ自分のペースで取り組めるようになりました。教科書の●●ページから何文字で抜き取りなさい、という課題もあるので、ちゃんと教科書を開く必要があります。
提出期限がこまめに設けられていて、学年最後に1年分まとめてやらなきゃならない、という最悪な状態も避けられると思います。
🏫 スクーリング:対面での授業
「スクーリング」とは、実際に学校へ行って先生の授業を受ける日のことです。
頻度は学校によって異なり、例えば:
- 年に2~3回だけ通えばOKの学校
- 週1日〜3日の通学型(サポート校など)
- 毎日通う全日型通信制(実質は通学制)
から選ぶことができます。
我が子は、完全オンライン動画視聴型。スクーリングは年に2~3回。最寄りのスクーリング会場に行く必要があります。一人のオンラインではできないグループワークや体育の授業があるようです。
🧪 テスト:単位を取るためのチェック
レポートを提出し、スクーリングにも参加したうえで、最後にテストを受けます。
この流れをクリアすれば、「単位」が認定されます。
卒業に必要な条件
通信制高校でも、卒業するためには以下の条件をすべて満たす必要があります。
卒業に必要な条件 | 内容 |
---|---|
在籍期間 | 最低3年間の在籍が必要(転校の場合は通算される) |
単位修得 | 合計74単位以上の取得が必要(各教科で条件あり) |
特別活動 | 年間30時間以上の特別活動(学校行事など)への参加 |
「在籍3年+単位+活動」の3つがそろえば、全日制と同じ“高卒資格”を取得できます。
通信制高校のイメージと現実|よくある誤解と本当のところ
「通信制高校って、サボってても卒業できるんでしょ?」
「友だちもできなくて孤独なんじゃない?」
「通信って、結局どこにも進学できないのでは?」
…通信制高校について調べ始めたころ、私自身もこんなふうに思っていた時期がありました。
でも実際に子どもが通うようになって、そのイメージはガラッと変わりました。
ここでは、よくある誤解と、それに対する“本当のところ”を、わが家の実感もまじえてご紹介します。
❌誤解①:通信制高校は「勉強しない子の行き先」
➡ 実際は、勉強をがんばる子もたくさんいます。
もちろん、学び方は自宅中心でマイペース。でもだからこそ、自分で計画を立ててコツコツ進める力が必要です。
大学受験を目指して予備校と両立している子、難関資格の取得を目指している子もいます。
わが子のまわりでも、塾と併用して「通信+受験対策」をしている子が何人もいます。
「勉強が苦手な子だけが行く場所」では決してありません。
❌誤解②:「卒業が簡単すぎて意味がない」
➡ 単位制であっても、サボっていれば卒業できません。
通信制高校でも、卒業には最低74単位+3年間の在籍+特別活動30時間が必要です。
そのためには、レポートを提出し、テストを受け、スクーリングに参加しなければなりません。
レポートは意外とボリュームがあり、「簡単に終わらない」と感じることも多いです。
自分の意思で動けないと、単位がとれず卒業が難しくなるケースも実際にあります。
❌誤解③:「友だちができない」「孤独」
➡ 少人数で落ち着いた関係が築きやすいことも。
通信制高校には、週1〜5日など通学スタイルを選べるコースもあります。
通学頻度が少ない分、顔を合わせる仲間の数は少ないかもしれませんが、似たような経験や価値観を持つ子と深い関係になれることも。
わが子も、最初は「友だちできるかな」と不安がっていましたが、スクーリングで顔を合わせた子とすぐにうちとけて、連絡先を交換し合い、時々、一緒に街におでかけしたりしてます。
❌誤解④:「進学や就職に不利」
➡ 通信制でも全日制と同じ「高卒資格」。進学も就職も可能です。
大学・短大・専門学校への進学も、通信制高校から問題なくできます。
通信制出身者を歓迎する大学も増えており、AO入試や推薦入試で進学する例も多いです。
また就職活動においても、「高校卒業資格」が必要とされる場面で不利になることはありません。
むしろ、自分で生活を管理しながら学んできた経験を評価されるケースもあります。
通信制高校は、「その子の生き方に合った道」

通信制高校には、全日制の枠には収まらない、多様な生き方を選ぶ子どもたちが集まっています。
わが子も、「人と同じでなくていい」「自分の心が安定していることが一番大事」だと気づき、ようやく今の環境で前向きに過ごせるようになりました。
通信制=逃げ道、というイメージを持っていた私自身が、今ではこう言いたいです。
「通信制は、合う人には最高の道です」と。
おわりに|選択肢を広げることで見えてくること
わが家の子どもが「学校に行きたくない」と言ったとき、
私は正直、とても動揺しました。
「どうすればいいの?」「この先どうなるの?」と、毎日不安でいっぱいでした。
不登校の子のことをよく知っている先生のコンサルも受けたりしました。
今、通信制高校という選択肢を知り、子ども自身が落ち着いて日々を過ごしている姿を見て、はっきりと言えます。
「高校の通い方には、いろんな形があっていい」
「無理して合わせるより、自分に合った環境を選ぶことが、なにより大切」なんだと。
通信制高校は、確かに誰にでも合うわけではないかもしれません。
でも、「今の学校がつらい」「毎日通うのがしんどい」そんな子どもたちにとって、新しいスタートを切る場所になれることは、間違いありません。
今、同じように悩んでいる方がいたら、どうか「無理に頑張らせる」ことよりも、「その子にとって安心できる居場所とは何か」を一緒に考えてあげてほしいなと思います。
子どもには、自分で道を選び、歩んでいける力がきっとあります。
その力を信じて、親としてそっと支えること。それが今、私ができる精一杯の愛情だと感じています。
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